シンポジウム
趣旨
授業のことを一切考えずに教師教育のことを考えるのは不可能である。教師の仕事は教育である。教育の代表的な方法が授業である。だから、教師教育のことを考えるときには、常に何らかのかたちで授業のことを考えているはずである。しかし、授業のことが常に思考の前面に現れているとは限らない。思考の背後にかくれているかもしれない。「授業」を思考の前面に出すべきである。「授業」を意識して「教師教育」を研究するべきである。
「教師教育と授業」という場合、「授業」の語には二重の意味が生じる。第一に、〈教師教育の内容としての授業〉という意味である。教師教育を担う教師が授業を教えるのである。「授業を教える」というのは、「授業」が教育内容であるということである。第二に、〈教師教育の方法としての授業〉という意味である。教師教育を担う教師が授業で教えるのである。「授業で教える」というのは「授業」が教育方法であるということである。
このように、教師教育の場における授業には、授業を授業で教えるという二重性がある。言いかえれば、教師教育における授業は「授業を教える授業」なのである。したがって、「授業を教える授業の在り方を問う」研究は、教師教育研究の中心領域をなすはずである。教育学の世界では「研究者」と「実践者」という語がよく用いられる。大学教師を念頭に「研究者」と言い、幼小中高教師を念頭に「実践者」と言っているようである。しかし、教師教育を研究する場においては、大学教師の「実践者」としての側面(大学の授業を実践する者としての側面)がもっと強く意識されるべきである。
本シンポジウムのコーディネーターは、大学教師の「実践者」としての側面を意識して、4名の登壇者に御登壇をお願いした。大村龍太郎会員、根岸千悠会員、百合田真樹人会員は、ともに『日本教師教育学会年報』に実践研究論文を発表している。鈴木慶子氏(非会員)は、シリーズ「大学の授業実践」(宇佐美寛監修)全四冊の一冊である『文字を手書きさせる教育―「書写」に何ができるのか』(東信堂、2015年)の著者である。
日時 9月20日(土)15:30~18:00
登壇者
・大村龍太郎(早稲田大学)
・根岸千悠(京都外国語大学)
・百合田真樹人(独立行政法人教職員支援機構)
・鈴木慶子(長崎大学)
コーディネーター
上原秀一(宇都宮大学)
課題研究Ⅰ
年報34号特集「『実践研究』を問う」の検討
趣旨
年報34号では、課題研究Ⅰ部会が協力して、特集「『実践研究』を問う」を構成した。そこに掲載された論文(部会メンバー・依頼・投稿)に関して、簡単な内容紹介と相互検討を行う。
内容
1.執筆者らによる各論文の内容紹介
2.指定討論者やフロアとのディスカッション
登壇者
有井 優太(新潟大学)
大坂 遊(周南公立大学)
齋藤 眞宏(旭川市立大学)
園部 友里恵(三重大学)
八田 幸恵(大阪教育大学)
南浦 涼介(広島大学)
渡辺 貴裕(東京学芸大学)
指定討論者
若松 大輔(弘前大学)
コーディネーター
渡辺貴裕(東京学芸大学)
課題研究II 教師教育学の研究アプローチ
趣旨
教師教育学は研究アプローチの多様性を特徴としている。本課題研究は、この「マルチディシプリン」という本学会の特徴にあらためて焦点を当て、研究アプローチという観点から教師教育学の学術的な基盤を確認することを通して、今後の研究を展望し、さらなる研究の活性化をめざすことを目的として設定された。
これまでの研究活動としては「私と教師教育学」というテーマを設定し、多様な研究アプローチをしている研究者が相互に話題提供と意見交換をすることを通じて、「マルチディシプリン」という本学会の特徴を明らかにするとともに、教師教育学の学術的な基盤について理解を深めてきた。その過程で、初等中等教育をはじめとする多様な教育の現場で日々の仕事に取り組んでいる実践者(とりわけ「研究的実践者」)、さらには大学等に身を置きながらも実践の現場と密に関わる「実践的研究者」が本学会に集っているということ自体の意義、重要性がみえてきた。その多様な構成員による研究活動、実践活動や、研究に対するニーズにあらためて着目することを通して、教師教育学という研究分野の独自性を見出すとともに、今後の研究のあり方を展望できればと考えている。
そこで第35回大会では、以上のようなこれまでの研究活動の経緯を踏まえ、本学会ならではのユニークな学術的な特徴を明らかにすることを通じて、研究アプローチに関する「見取り図」を描くことを目指し、参加者とともに協議を深めることを目的とした研究交流の場を設ける予定である。
<話題提供者>
鹿毛雅治(慶應義塾大学)/木原俊行(四天王寺大学)/須田将司(学習院大学)/高谷哲也(鹿児島大学)/長谷川哲也(岐阜大学)/羽野ゆつ子(大阪成蹊大学)/三品陽平(愛知県立芸術大学)
<指定討論者>
岩田康之(東京学芸大学)
岩瀬直樹(軽井沢風越学園)
課題研究Ⅲ 〈地域的文脈〉からひも解く教員不足問題
趣旨
これまで本部会では、国際比較研究を方法論に、世界的にみられる「教員不足[ Teacher Shortage ] 問題」にアプローチしてきました。現部会メンバーが前期を引き継いでおり、前期に確認した「多様な教職ルートの存在」を前提に、「教員不足」の定義の問題を常に見据えながら、昨年大会では〈量的不足〉と〈質的不足〉をとらえ直し、〈入り:採用・入職〉と〈出:退職〉の軸とのマトリックスを枠組みに、慢性的な問題/喫緊性の問題を対照しながら会場と議論を深めました。
今大会では、教員不足問題について「地域的文脈」に焦点化し、人口や人材の集中する都市部と、周縁地域・遠隔地域を対照し、国内外の事例に基づきながら議論を組みます。
一つには「異動」という日本的な事情や、また、圧倒的な人員不足のなか多様な“支援員”や関係スタッフに支えられざるをえない等の地域間の実情の差異に着目することによって、〈足りないのは“誰”なのか〉、〈補っているのは何なのか(/何は補われないのか)〉という視線で、「教員“不足”」問題を会場参加者とともに検討したいと考えています。
国際比較の事例として、オーストラリアと中国を取り上げ、日本国内でも広大かつ遠隔という地域的文脈から北海道の学校・教員事情を取り上げて照らしながら、議論の展開をねらいます。
【コーディネーター】
矢野 博之(大妻女子大学)
【登壇予定者】
伊井 義人(大阪公立大学) オーストラリアの事例から
張 楊 (北海道大学) 中国の事例から
佐藤 仁 (福岡大学)
原北 祥悟(崇城大学)
【指定討論者】
玉井 康之(北海道教育大学釧路校)
研究倫理委員会・若手研究者育成支援部・課題研究Ⅰ部会 合同企画
教師教育研究における「実践研究」のデザインと倫理
趣旨
教職大学院の全国的な拡大を一つの契機に、教育学諸領域で「実践研究」が盛んに行われている。本学会は2005年9月に「『研究論文』と『実践研究論文』の区分に関する申し合わせ」を定め、早々と本学会年報に「実践研究」の成果を公表する場を設けた。以来今日に至るまで、教師教育の実践を対象とする優れた実践研究論文を掲載している。他方、教師教育研究における「実践研究」はいまだ発展の最中にあり、研究の方法や内容、倫理的配慮のあり方など、議論すべき課題も多い。さらにこの「実践研究」には、アカデミックな背景をもつ研究者だけではなく、様々な背景をもつ人々が参画しており、その多様さは本学会の特長であるものの、共通した基盤で議論する難しさも生み出している。こうした問題関心から、研究倫理委員会、若手研究者育成支援部、課題研究Ⅰ部会は、第35回研究大会の合同企画として、教師教育研究における「実践研究」のデザインと倫理をテーマに、本学会の現状を多角的に捉えつつ、学会員相互の議論を通じて「実践研究」に対する理解を深めたい。